Manuel D. Cerqueir氏 |
CORE320試験で試みられた診断アプローチは興味深いものの,どこの施設でもすぐに使えるものではありません。今回の試験結果によって,現在の臨床診療が変わることはないでしょう。
CORE320試験が実施されたジョン・ホプキンズ病院は,この領域の特別専門技術をもつ医師と機器を備えた最高峰の大学病院です。つまり,この診断アプローチは選び抜かれた病院のために提供される技術であり,世界中のどの病院でも使用できるような診断方法ではありません。また,いまわれわれは,「侵襲的冠動脈造影(ICA)」と「単一光放射断層撮影(SPECT)」について,診断や病態管理,患者の長期予後への影響に関する情報と知識をもち合わせていますが,CORE320試験で検討されたCTによる新たな診断方法については,さらなる情報が必要な状況です。
ICAは狭窄率に関する解剖学的判定のために,SPECTは生理学的判定のために用いられます。たとえば筋肉への血流は,通常は血管狭窄と関連していますが,血管はときどき拡張するので,解剖学的情報は生理学的情報とは一致しません。CORE320試験では,CTに解剖学的情報と生理学的情報の両方の情報を提供する能力があるかどうか検討されました。そして,特別な専門技術を有する人々によって実施されたこの新規診断方法は,既存のCTとSPECTを併せたものと同程度の冠動脈疾患診断確度であると報告されました。
私も,一度の検査で2つの領域における最高峰の情報を提供できるようになれば良いと思っています。しかし,CORE320試験で使用された320列面検出器は広く使用されているシステムではなく,使用できたとしても,この診断方法を取り入れるだけの十分な技術を有するスタッフがいません。新しい技術に関する問題点は,適切な専門技術を持たないままに試みようとする人々がいることです。そうすると誤診断や過剰診断の可能性が生じます。つまり実際には異常ではないものを異常と診断し,必ずしも実施する必要がない,害になる可能性のある検査をさらに実施しなければならなくなるのです。ICAとSPECTに関しては,使用方法が簡略化・標準化されたため,大学病院から他の施設へと普及し,そして一貫した結果を得ることができています。今回検討された新規診断方法についても,簡略化・標準化が図られるべきです。