3月29日〜31日の3日間,米国,フロリダ州オーランドにおいて,第58回米国心臓病学会(ACC)学術集会が開幕した。同じ会場では,インターベンション領域を対象にしたi2 Summitも同時開催されている(こちらは3月28日〜31日)。
プログラムには最先端の臨床知見やテクノロジーを発表するセッションから,生涯教育のセミナーまで含まれ,米国内外の心血管領域の専門家が一堂に会している。
なかでも “Late-Breaking Clinical Trials (LBCT)”は,とくに注目のスペシャルセッションで,どれも今回初めて発表される試験である。LBCTとして発表される全43試験のうち,ここではとくに日本の臨床医の関心が高いと思われる試験を取り上げ,その発表概要を紹介する。
ACTIVE A | Clopidogrel Plus Aspirin Versus Aspirin Alone for Prevention of Vascular Events in Patients With Atrial Fibrillation at High Risk of Stroke: The Results of ACTIVE A |
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Stuart J. Connolly (ハミルトン,カナダ) |
【3月31日・オーランド】
試験背景/目的 心房細動(AF)患者の脳卒中予防において,ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬(VKA)が非常に有効なため,高リスク症例ではその投与が推奨されている。しかし,「コントロールが難しい」,「患者に適さない」などの理由により,実際に投与されている患者は約半数にすぎないという。その際の選択肢となるのがアスピリンであるが,効果はワルファリンに劣る。
そこで,アスピリンにクロピドグレルを上乗せすることで,さらなる心血管イベント抑制が得られるかどうかを検討するためのランダム化比較試験ACTIVE Aが実施された。
一次エンドポイントは複合脳心血管エンドポイント(脳卒中+心筋梗塞+非中枢神経系塞栓症+血管死)。
二次エンドポイントは脳卒中,大出血である。
3月31日のACC 2009 LBCT VIにおいてStuart J. Connolly氏(McMaster University,ハミルトン,カナダ)がこの試験の結果を発表した。
試験プロトコール 2003年6月〜2006年5月に登録が行われ,33ヵ国,580施設が参加した。対象は脳卒中リスクを1個以上有するAF患者で,VKA治療に適さない症例。出血の主要な危険因子がある患者は除外した。
最終的に7554例がクロピドグレル群(クロピドグレル75mg/日)あるいはプラセボ群にランダムに割付けられた。アスピリン 75〜100mg/日は全例に投与された。
試験結果 ACTIVE Aへの登録事由は,主治医がVKA治療に不適と判断したためが50%ともっとも多く,そのほか出血性の危険因子を有するためか,患者がVKA治療を拒否したため。患者背景は,平均年齢71歳,男性58%。ベースライン時にVKA治療を実施していた症例は8.5%で,83%にアスピリンが投与されていた。
追跡期間中央値3.6年間で,複合脳心血管イベントはクロピドグレル群で832例,プラセボ群で924例に発生。アスピリンへのクロピドグレル上乗せにより,有意な脳卒中抑制効果が認められた(ハザード比 [HR] 0.89,95%CI 0.81〜0.98,P =0.014)。さらに二次エンドポイントの脳卒中においても有意差が得られた(HR 0.72,95%CI 0.62〜0.83,P =0.00002)。タイプ別にみると,虚血性/不明の脳卒中を有意に抑制していることがわかる(相対リスク[RR] 0.68,95%CI 0.59〜0.80,P <0.001))。心筋梗塞については群間に有意差はみられなかった(HR 0.78,95%CI 0.59〜1.03,P =0.077)。
Stuart J. Connolly氏は「心筋梗塞の発生率は,クロピドグレル群0.7%/年,プラセボ群0.9%といずれも低い。これはアスピリンが急性冠症候群に有効であるというこれまでのデータと一致する」と説明した。
一方,クロピドグレル群では大出血の発生率は2.0%/年となり,プラセボ群の1.3%/年に比べて有意に増加していた(RR 1.57,95%CI 1.29〜1.92,P <0.001)。さらに,脳内出血,脳外出血,重篤な出血のいずれもクロピドグレル群で有意に増加。
アスピリンへのクロピドグレル上乗せ治療を1000人に3年間行った際,脳卒中を28件,心筋梗塞を6件予防できることになるが,同時に,大出血(脳卒中を除く)が20件発生する計算になる。Stuart J. Connolly氏は「アスピリンへのクロピドグレル上乗せ治療は,許容できるリスクの範囲で,多くの患者に重要なベネフィットをもたらす」と結論づけた。
ディスカッションのなかで,「実際にワルファリン不適の患者はどれくらいか」との問いに対し,Stuart J. Connolly氏は「医師はまずACTIVE W(クロピドグレル+アスピリン vs ワルファリン)への登録を考慮し,不適合の場合にACTIVE Aへ登録していった。ACTIVE A試験の対象者のうち,ワルファリン禁忌は23%」と答えた。
< 2010.7.01 >
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