3月29日〜31日の3日間,米国,フロリダ州オーランドにおいて,第58回米国心臓病学会(ACC)学術集会が開幕した。同じ会場では,インターベンション領域を対象にしたi2 Summitも同時開催されている(こちらは3月28日〜31日)。
プログラムには最先端の臨床知見やテクノロジーを発表するセッションから,生涯教育のセミナーまで含まれ,米国内外の心血管領域の専門家が一堂に会している。
なかでも “Late-Breaking Clinical Trials (LBCT)”は,とくに注目のスペシャルセッションで,どれも今回初めて発表される試験である。LBCTとして発表される全43試験のうち,ここではとくに日本の臨床医の関心が高いと思われる試験を取り上げ,その発表概要を紹介する。
REVIVAL-3 | A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial of Erythropoietin in Patients With ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Undergoing Percutaneous Coronary Intervention (REVIVAL-3) |
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【3月30日・オーランド】
試験背景/目的 PCIや血管形成術によって再灌流が得られても,心臓に非可逆的な傷害が残り,心不全へと進展するケースは少なくない。エリスロポエチンは赤血球の産生を調節するホルモンだが,動物実験では,心筋のアポトーシスを制限し,血管新生を促すことで梗塞サイズを減少させる作用があることがわかってきた。
そこで, primary PCIを実施するSTEMI患者を対象に,高用量エリスロポエチン(エポエチンβ)を投与し,その有効性を検討するプラセボ対照,ランダム化比較試験が実施された。
3月30日のLBCT IVにおいてIka Ott氏(Deutsches Herzzentrum)がこの試験の結果を発表した。
一次エンドポイントは6ヵ月後のLVEF(MRIにて評価)。
試験プロトコール 対象は18〜80歳,初発のprimay PCIを実施する急性STEMI患者で,血管造影上のLVEF<50%の症例に限定した。コントロール不良の重症高血圧,血液学的疾患,試験に影響する血液学的検査値異常,30日以内に冠動脈インターベンションを実施,MRI禁忌などの症例は除外した。
エリスロポエチン群に68例,プラセボ群に70例がランダムに割付けられた。エリスロポエチン群では,PCI直後,24時間後,48時間後にそれぞれエポエチンβ 3.3×104Uが静脈内投与された。この投与法についてIka Ott氏は「過去に脳卒中患者を対象にした試験で有用性が認められている方法である」と説明した。
試験結果 対象者の平均年齢はエリスロポエチン群59歳,プラセボ群62歳,女性の比率はそれぞれ18%,26%。両群ともKillip分類Iの患者がほとんどであり,平均LVEFは46%。PCIはDESが90%以上を占めた。
PCI後,両群ともに90%以上がTIMI 3フローを達成した。またエリスロポエチン群では網状赤血球が増加したが,ヘモグロビン値は変化しなかった。
6ヵ月後のLVEF(一次エンドポイント)は,エリスロポエチン群52%,プラセボ群52%となり,有意差はみられなかった(P =0.91)。左室拡張終期容積係数(LVEDVI),左室収縮終期容積係数(LVESVI),梗塞サイズ,梗塞サイズ減少率,EF増加率のいずれの項目についても,群間に有意差はみられなかった。さらに,年齢,腎機能,LVEF,灌流までの時間などでサブグループ解析も行っているが,いずれも有意な結果は得られていない。
一方で,6ヵ月間の主要有害心脳血管イベント(MACCE)については,プラセボに対する相対リスクは2.35(95%CI 0.75〜7.37,P =0.14)となり,有意ではないものの,エリスロポエチンで悪い傾向がみられた。
PCIを実施するSTEMI患者に対し,高用量エポエチンβを投与しても,LVEFは改善せず,梗塞サイズの減少もみられなかったため,Ika Ott氏は「今回の結果が実地臨床に何らかの変化をもたらすことはない」と述べた。
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