King氏に電話インタビューにこたえてもらった |
BARI 2D試験は,糖尿病を合併した安定性冠動脈疾患患者を対象とし,早期血行再建術と積極的薬物療法,インスリン抵抗性改善治療とインスリン治療を比較した試験です。主要結果は2009年6月に発表され,早期血行再建術を施行したかどうかに関わらず,5年間での全死亡に差はありませんでした。
今回発表された二次エンドポイント(心血管死と心筋梗塞)の結果からは,重篤な患者(その多くはCABG)では血行再建術が有効で,比較的軽症の患者では積極的薬物治療が有効であることが示されました。
インスリン抵抗性改善治療とインスリン治療の比較した結果,両者のアウトカムに差はありませんでしたが,インスリン抵抗性改善治療ではインスリン治療よりもHbA1cレベルを改善しています。
血行再建術または積極的薬物治療とインスリンを組み合わせた4つの治療方法の有効性も比較されました。その結果,より重篤な患者においては,CABGとインスリン抵抗性改善治療の組み合わせが有効であることが示され,これまで多くの医師により行われてきた治療法を支持するエビデンスが示されました。
BARI 2D試験で解決されていない問題がいくつかあります。
1つ目は,この試験で対象となったような患者では,CABGとステント植込み術のどちらが有効かが検討されていないことです。この点については,現在,CABGと薬剤溶出型ステントを比較するFREEDOM試験が進行中で,2011年に結果が発表される予定です。
2つ目は,CABGと積極的薬物治療の比較が軽症患者でなされていないこと,3つ目は, BARI 2D試験では対象患者の1/3が糖尿病を合併していたにも関わらず,こうした患者においてCABGとPCIのどちらが有効であるかが比較されなかったことです。
<→BARI 2D: 2型糖尿病合併冠動脈疾患患者における即時血行再建術の有効性の検討>
BARI 2D試験では,リスクの高い重症患者においては,血行再建術により死亡や心筋梗塞が減少することが示されました。しかし,医療経済的な解析により,血行再建術は他の治療よりも高額であることが明らかになりました。また,比較的軽症の低リスク患者では,血行再建術はあまり有効ではありませんでした。
コストと有効性,臨床的アウトカムのバランスをとるためには,どのような患者において血行再建術が有効であるのかをはっきりさせなければなりません。そのためには,まず,その治療戦略が本当に臨床的に有効であるかを検討し,有効ではない場合には,コストに重点をおく必要があるでしょう。
<→BARI 2D: BARI 2D試験における医療経済的アウトカム>
< 2010.7.01 >
〔最新号紹介〕
THERAPEUTIC RESEARCH vol.31 no.6 2010
< 2010.6.28 >
〔ニュースリリース〕
No.17 – 2010: 「「アマリール®」が小児2型糖尿病患者にも使用可能に」ほか
< 2010.6.24 >
〔トピックス〕
[トピックス] 脳卒中の予防啓発活動の重要性
< 2010.5.31 >
〔最新号紹介〕
THERAPEUTIC RESEARCH vol.31 no.5 2010
< 2010.5.11 >
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THERAPEUTIC RESEARCH vol.31 no.4 2010