11月14日〜18日,オーランド(米国)において,米国心臓協会(AHA)の学術集会が開催された。本学会には心血管領域の専門家が世界各地から集まり,発表演題の数が多いだけでなく,その質が高いことから循環器分野における最高峰の学会の一つといえる。5日間にわたり,7つの専門分野に分けて発表された。
ここでは,今年新たに加わったセッション”Late-Breaking Clinical Science”のなかから,とくに日本の臨床医の関心が高いと思われるセッションを取り上げ,その概要を紹介する。
RecordAF Registry | Differences in Clinical Outcomes with Rhythm- and Rate-control Therapies for Atrial Fibrillation in the RecordAF Registry |
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Comment: | Stanley Nattel, MD | リズムコントロールとレートコントロールの直接比較は適切ではない |
A John Camm, MD. (St George's University of London) |
試験背景/目的 AFFIRM試験などの結果から,心房細動(AF)患者における心血管イベントの治療においては,レートコントロールを上回るリズムコントロールの有効性は示されていない。しかし,ランダム化比較試験は,実臨床の状況を十分に反映していないことも多い。そのため,登録データを詳細に検討し,ランダム化比較試験の全体像を把握することが必要である。
そこで,AFの初発もしくは再発患者に対する医師の治療戦略(レートコントロールもしくはリズムコントロール)の選択の影響を前向きかつ長期にわたり追跡するRecordAF登録研究が企画された。
一次エンドポイントは,AFマネージメント成功率(洞調律または目標とする心拍数の達成+主要心血管イベント発生なし+治療戦略の変更なし)。二次エンドポイントは主要心血管イベント(心血管死+心筋梗塞+脳卒中+入院を要する一過性脳虚血発作+入院もしくは入院の延長[不整脈イベント,他の心血管イベント,主要なアブレーション合併症])の発生率。
12ヵ月間の追跡結果を,11月17日のLate-Breaking Clinical Science IIにおいてA John Camm氏(St George’s University of London)が発表した。
試験プロトコール RecordAF登録研究は2007–2009年に実施され,21ヵ国,532施設が参加。対象は18歳以上で,AFと診断されて1年未満の患者5,604例。永続性AF,一過性の原因によるAF,術後AFは除外された。対象者には循環器医によりリズムコントロールもしくはレートコントロールが選択され実施された。
試験結果 リズムコントロールが実施された患者(リズム群)は3,076例(54.9%),レートコントロールが実施された患者(レート群)は2,528例(45.1%)であった。ベースラインでの患者背景は,平均年齢はリズム群のほうが低く(リズム群64歳,レート群67歳),男性の割合(57%,58%),平均BMI(28.6,28.3)はレート群と差がなく,安静時の心拍数が少なく(76.6bpm,80.6bpm),心不全既往歴例が少なく(23例,30例),NYHA心機能分類IもしくはII度が少なく(20例,24例),LVEF40%以下が少なく(7例,13例),糖尿病合併例が少なく(15例,17例),弁膜症合併例が少なく(16例,24例),孤立性AF例が多かった(21例,16例)。
ベースライン時のAF分類をみると,リズム群では発作性AF 63%,持続性AF 30%と発作性AF例が多く,レート群では発作性AF 32%,持続性AF 63%であった。また,登録時にAFであった例はレート群81%,リズム群39%と,レート群に多いという特徴がみられた。
1年後に洞調律に復していた例はリズム群で81%,レート群で33%。一方,永続性AFに進展していた例はリズム群で13%,レート群で54%であった。
一次エンドポイント(治療成功率)は,リズム群はレート群よりも有意に高かった(60%,47%,P<0.001)。多変量解析を行ったところ,治療戦略(リズムコントロールまたはレートコントロール)のほかに,NYHA心機能分類I/IIが独立した予後因子であることが示された(P<0.0001)。二次エンドポイントについては,リズム群とレート群の間で有意差はみられなかった。
この結果についてCamm氏は「AFマネージメントの成功率はリズムコントロールのほうが高いという結果が得られましたが,そのことが臨床アウトカムの改善にはつながっていないことが示されました。本登録研究の結果は,これまでのランダム化比較試験の結果を追認するものであったといえるでしょう」と結んだ。
DiscussantのAlbert Waldo氏(Cleveland,米国)は,「この試験の結果は,AFFIRM試験やRACE試験の結果と一致したものです」と支持。リズムコントロールに関しては,AFFIRM試験の結果を引用し,「AFエピソードの回数および頻度を減少させ,エピソード発生時の症状を和らげるもの」と説明した。さらに,「AFの再発は必ずしも治療薬選択の失敗を示しているわけではなく,また抗不整脈薬の有効性はAFエピソード初発までの期間のみによって決まるのではありません。偶発的なAFの再発は,その治療法が適切であることを示している可能性もあります」と述べた。
< 2010.7.01 >
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THERAPEUTIC RESEARCH vol.31 no.6 2010
< 2010.6.28 >
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No.17 – 2010: 「「アマリール®」が小児2型糖尿病患者にも使用可能に」ほか
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< 2010.5.31 >
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