7月2日〜4日の3日間,京都(国立京都国際会館)において,第24回日本不整脈学会学術大会(会長:鎌倉史郎氏・国立循環器病センター)・第26回日本心電学会学術集会(会長:堀江稔氏・滋賀医科大学)合同学術集会が開催されている(学術集会ホームページ)。
両学会の合同開催は3年ぶりとなり,心電学,不整脈学,循環器学の基礎から臨床までの広範な領域から536の発表がなされる。なかでも「心房細動」は注目のトピックであり,多くの演題が取り上げられている。ここでは,そのなかからとくに臨床医の関心が高いと思われるセッションを取り上げ,その概要を紹介する。
心房細動アブレーションのリアルワールド —治療困難例から合併症管理まで— |
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Feifan Ouyang氏(Asklepios Klinik St.Georg, Hamburg, Germany)によるKeynote Lectureに続き,5名のシンポジストが講演。心房細動アブレーション後の心房頻拍への取り組みなどを紹介。まさに“リアルワールド”が凝縮された発表となった。
●持続性心房細動アブレーション後の再発性心房頻拍に対するアブレーション
高橋 良英氏(横須賀共済病院循環器センター内科)
心房細動(AF)アブレーション後に好発する心房頻拍(AT)とそのアブレーションによる予後を臨床的に検討した結果を報告した。
AFアブレーション後,約30%でATを再発したが,3Dマッピングシステム(CARTO®):ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)によりほとんどのATについてメカニズムが同定され,それらはマクロリエントリー,局在起源頻拍,局在リエントリーであることがわかった。最終的に86%の症例で,アブレーション後の洞調律維持が可能であった。
●慢性心房細動に対する同側拡大肺静脈付加心房基質修飾アブレーションの予後と術後心房頻拍の治療
鵜野 起久也氏(土浦協同病院循環器センター内科)
慢性心房細動(CAF)に対する,CARTO®)を用いた同側拡大肺静脈付加心房基質修飾アブレーション(EEPVI-LASA)の症例データを紹介した。
アブレーションを施行した203例のうち,45例で心房頻拍(AT)が再発したため,セカンドセッションが行われた。9例ではサードセッションまで行われた。中隔に基質が残っている場合にATが再発し,これをつぶしていくのがセカンド,サードセッションの特徴。心腔内直流除細動閾値(ADFT)が<20の症例は,≧20以上の症例と比べ有意にAT再発が抑制された。
心房基質への積極的な修飾アブレーションに対し,フロアからは「リエントリーが次々と移動するのはフラグメンテーションし過ぎたせいではないのか。もっとシンプルに施行すべきではないか」といった慎重な意見もみられた。
●EnSiteを用いた心房細動アブレーションの難治例の同定と対策および合併症への対策
土谷 健氏(熊本中央病院循環器科)
どのような心房細動(AF)症例において,単独の拡大肺静脈隔離(CPVI)が有効であるか,どのように合併症を予防するかについて,自身のデータをもとに解析し,結果を報告した。
3Dマッピングシステム(エンサイトシステム®):セント・ジュード・メディカル株式会社)にて電位を測定。左房に低電位領域(LVZ)がない症例では,CPVIのみで多くの症例がAF停止可能であったが,LVZがある場合は左房全体に電気的ダメージを受けるため,CPVIに加え左房本体の通電が必要であることが示された。土谷氏は「エンサイトシステムを用いることで,二次性心房頻拍への対処が容易かつ有効にできた」とし,実用性を強調した。
●心房細動アブレーション後の再発に関するリアルワールド—カルジオフォンを用いた検討—
高月 誠司氏(慶應義塾大学医学部循環器内科)
心房細動(AF)アブレーション後の再発について,携帯型心電図(カルジオホン®):日本光電工業株式会社)を用いて診断したデータを報告した。
カルジオホンは患者の手指より30秒/回データを記録し,そのデータはPHSによりサーバーに送られる。AFアブレーション後,2回/日データを記録し,6ヵ月間追跡。AF再発の場合には,抗不整脈薬を投与し,3ヵ月以上持続する場合にはセカンドセッションを施行した。
発作性AFよりも持続性AFでアブレーション後の再発が多くみられたが,その半分以上が一過性であり,自然治癒した。再発は左房容積が大きく,AF罹病期間が長い例で多くみられた。このことから,高月氏は「AFの再発には心房リモデリングなどが関連している可能性がある」と考察。
フロアからは,「携帯型心電図はコンプライアンスが良いと思われるが,1回に30秒しかデータが記録できず,夜間の記録もできないので,ホルター心電図と組み合わせるべき」との意見もあがった。
●心房細動カテーテル・アブレーションにおける横隔膜麻痺と食道潰瘍の予防
佐竹 修太郎氏(葉山ハートセンター不整脈センター)
広範囲に焼灼する心房細動(AF)アブレーションの予後は良好だが,横隔膜神経麻痺や食道潰瘍など,さまざまな合併症を引き起こす。高周波ホットバルーンを用いたAFアブレーションにより,これらの合併症を回避できるかを検討し,その結果を報告した。
食道温度が急激に上昇した際はバルーン温度を下げ,また後期には食道内への冷却水の注入をくり返した。薬剤抵抗性AF患者278例にホットバルーンによるアブレーションを施行し,全例で成功。冷却水を注入しなかった例では食道温度が43℃を超え,食道潰瘍が発現したが,39℃に冷却した例では食道潰瘍はみられなかった。また,横隔膜ペーシングにより,右横隔膜神経伝導能低下を瞬時にとらえることで,横隔膜神経麻痺を回避できることを示した。
各講演終了後に,フロアと演者間で活発な意見の交換が行われ,予定時刻を過ぎてもその議論は続き,最終的には時間の関係で打ち切られるほどであった。座長の熊谷氏は「このシンポジウムにより心房細動アブレーションの問題点が明らかになり,それをいかに克服していくかが今後の課題である」と締めくくった。
< 2010.7.01 >
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THERAPEUTIC RESEARCH vol.31 no.6 2010
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No.17 – 2010: 「「アマリール®」が小児2型糖尿病患者にも使用可能に」ほか
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< 2010.5.31 >
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