3月14日〜16日,アトランタ(米国)において,米国心臓病学会(ACC)の学術集会,およびインターベンション領域を対象にしたI2 Summitが開催された。本学会は心血管領域の最重要学会の一つであり,毎年,世界100ヵ国以上の専門家が参加している。3日間にわたり,臨床教育から,最先端の臨床知見やテクノロジーにおよぶ幅広いセッションが行われた。
なかでも,“Late-Breaking Clinical Trials(LBCT)”は,初めて臨床試験の結果が発表される注目のセッションである。ここでは,とくに臨床医の関心が高いと思われる5試験を取り上げ,その発表概要を紹介する。
RACE II | Rate Control Efficacy in Permanent Atrial Fibrillation: A Randomized Comparison of Lenient Rate Control versus Strict Rate Control Concerning Morbidity and Mortality |
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試験背景/目的 心房細動(AF)は,脳卒中や心不全のリスクを高める,看過できない疾患である。そのマネージメントには,洞調律の回復をはかるリズムコントロールと,心拍数を調節するレートコントロールが行われるが,これまでの検討で,両治療法の有用性は同等であることが示されている。とくに持続性AFにおいては,レートコントロールが第一選択とされている。
ACC/AHA/ESC 2006ガイドラインでは,症状を抑制し,合併症を回避するため,厳格なレートコントロール(心拍数[HR]60〜80bpm)が推奨されている。しかし,明確なエビデンスはなく,どの程度までコントロールすべきかについては明らかではない。さらに,治療薬の重大な副作用,ペースメーカー植え込みの高い頻度などの問題点もある。
RACE II試験は,永続性AF患者を対象とし,厳格なレートコントロール(目標HR<80bpm)に対する緩やかなレートコントロール(目標HR<110bpm)の非劣性を検討する,前向きランダム化比較試験である。
一次エンドポイントは心血管死,心不全による入院,脳卒中,全身性塞栓症,大出血,不整脈イベント(失神,持続性心室頻拍,心停止,治療薬の重大な副作用,ペースメーカーまたは除細動器の植え込み)。
3月15日のLate-Breaking Clinical Trials IIにおいて,Isabelle C. Van Gelder氏(University of Groningen,オランダ)がこの試験の結果を発表した。また,同日,New England Journal of Medicine誌の電子版に論文が掲載された。
試験プロトコール RACE II試験にはオランダの33施設が参加。対象は80歳以下,罹病歴12ヵ月以上のAF患者で,安静時平均HR>80bpm,経口抗凝固薬投与例614例。
対象者は厳格なレートコントロール群(HR<80bpmを目指す)と緩やかな(非厳格)レートコントロール群(HR<110bpmを目指す)にランダムに割付け,2年間以上追跡した。
両群とも目標HRへの到達のため,β遮断薬,Ca拮抗薬,ジゴキシンを単独または併用投与した。目標値到達までは,2週間に1度来院し,12誘導心電図にてHRを計測した。目標HR到達後,厳格なレートコントロール群では,徐脈をチェックするため,24時間ホルター心電図でモニタリングを行った。
試験結果 薬剤の使用は,緩やかなレートコントロール群よりも,厳格なレートコントロール群で有意に多かった(P<0.01)。
3年間の追跡期間における一次エンドポイントの発生は,厳格なレートコントロール群で14.9%,緩やかなレートコントロール群で12.9%,群間差は−2.0%(90%信頼区間−7.6〜3.5)となり,厳格なレートコントロールに対する緩やかなレートコントロールの非劣性が証明された。
CHADS2スコア別のサブグループでみると,CHADS2<2の患者では,厳格なレートコントロール群のほうが一次エンドポイントの発生が少なかったが(非劣性P=0.02),CHADS2>2の患者では,緩やかなコントロール群のほうが少なかった(非劣性P<0.001)。
この結果についてGelder氏は「AF患者における緩やかなレートコントロールの有用性は,厳格なレートコントロールに劣らないことが示されました。緩やかなレートコントロールは,厳格なレートコントロールよりも,来院回数や検査,治療薬の投与量が少なく,より施行しやすい治療戦略です。今後,慢性AF患者の治療においては,緩やかなレートコントロールが第一選択となるでしょう」と臨床での実用性を示した。
< 2010.7.01 >
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< 2010.6.28 >
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