[学会情報]欧州心臓学会学術集会(ESC)2009
(2009年8月29日〜9月2日 in バルセロナ)
心房細動に対するARBの作用

編集部が選ぶ注目トライアル「Hot Line」で取り上げたACTIVE Iに関連して,海外エキスパートからは,「理論的には,ARBは心房細動(AF)に対して,ベネフィットを有することが期待される」とのコメントを得た。

ESC2009の一般演題において,イルベサルタンによるAFへの作用を検討した基礎研究が2件発表されていたが,いずれもAFに対する有用性を示唆したものであった。こうした基礎研究の結果が,どのように臨床的ベネフィットへと結びつくのか,今後の解析を待つ必要がありそうだ。

イルベサルタンは心房細動における血栓形成前の単球活性を抑制する
〈Poster Session〉

Presenter:Matthias Hammwöhner(Klinik für Kardiologie Universitätsklinik Magdeburg)
Irbesartan prevents prothrombotic activation of monocytes in atrial fibrillation
イルベサルタンが心房細動における単球活性の上昇を抑制する可能性を示唆

電気的除細動後24時間の心房細動(AF)患者では,洞調律の健常人と比較して血中単球活性レベル(血清ネオプテリン,MCP-1,ICAM-1)が有意に高くなっていることが示された。それに対して,イルベサルタンによるレニン-アンジオテンシン系の抑制がどのように作用するか,ブタを用いた実験により検討された。

高頻度心房ペーシングを受けたブタでは,シャム処置を受けたブタと比較して,血清ネオプテリン,CD137,ICAM-1の増加度が大きかったが,イルベサルタンを静注したブタでは,ICAM-1およびCD137の増加が有意に抑制されることがわかった。

長期心房頻拍によりイオンチャネルリモデリングを生じさせたイヌに対するエナラプリル,イルベサルタン,アンジオテンシン-(1-7)の作用〈Abstracts〉
Presenter:Enzhao Liu(Second Hospital of Tiajin Medical University)
Effects of enalapril, irbesartan, and angiotensin-(1-7) on long-term atrial tachycardia-induced ionic remodeling in dogs
心房イオンチャネルリモデリングに対するエナラプリル,イルベサルタン,アンジオテンシン-(1-7)の作用はそれぞれ異なる
Enzhao Liu氏

Liu氏らは,イヌに14日間,高頻度心房ペーシングを行い,イオンチャネルリモデリングを生じさせた。高頻度ペーシングを行ったイヌでは,シャム処置を受けたイヌと比較してKv4.3 mRNA(一過性外向きK電流[Ito]とパラレルに変動)およびL型Caチャネルα1CサブユニットmRNAが有意に減少していることを確認した。

このイオンチャネルリモデリングを誘発したイヌに対し,エナラプリルを投与すると,Kv4.3 mRNAの増加,Ito密度の増加がみられたが,活動電位持続時間(APD)への作用はみられなかった。一方,イルベサルタンを投与すると,L型Caチャネル電流(ICaL),Itoに対する作用はみられなかったが,APDを延長させることがわかった。また,アンジオテンシン-(1-7)を投与すると,Kv4.3 mRNAの増加,Ito密度の増加,ICaL密度の増加がみられ,さらにAPDの延長が認められた。

Liu氏は「エナラプリル,イルベサルタン,アンジオテンシン-(1-7)は心房のイオンチャネルリモデリングに対し,異なる作用を示し,イルベサルタン,アンジオテンシン-(1-7)がエナラプリルよりも優れていた」と結んだ。