[学会情報]米国心臓病学会(ACC)2010
 
EXPERT COMMENT
Buxton氏に聞く — CABANA,RACE II
CABANA:大規模試験での検討が必要

CABANA試験は非常に小規模の試験ですので,この結果から結論を導くことはできません。しかし,この試験が試みられたことにより,より大規模な試験が行われることが期待されます。大規模な試験において,カテーテルアブレーションと抗不整脈薬の有効性が比較検討されるまでは,臨床での治療戦略を変えるべきではありません。

<→CABANA pilot study: 心房細動におけるカテーテルアブレーション治療と抗不整脈薬治療の比較>

RACE II:緩やかなレートコントロールが優れているとはいいきれない

RACE IIは,心房細動の治療において,緩やかなレートコントロールが本当に適しているとするには,追跡期間があまりにも短すぎます。心室頻拍誘発性心筋症などは,発現するまでに数年かかることもあるからです。ですから,現時点で,緩やかなコントロールがよい,または厳格なコントロールに劣らないものであると断言すべきではありません。そのような早まった判断が下されるのではないかと,非常に懸念しています。

緩やかなコントロールでは,心不全や脳卒中の発症率が低く,心血管死が1%抑制されたという結果が示されていますが,本当にそうであるのかは疑問です。

また,この試験の対象患者は,非常に厳選された,ほとんど症状のない症例です。ですから,この結果を症候性の患者に当てはめることはできません。

また,対象患者が少なく,イベントの発生数も少なかったことも,問題点のひとつです。2つの治療戦略を的確に検討するためには,より大規模で,長期間の試験を行うことが必要です。

<→RACE II: 永続性心房細動におけるレートコントロールの有効性:緩やかvs厳格なレートコントロールの比較>

Profile: Alfred E. Buxton, M.D.
Director, Cardiology Division, Rhode Island and Miriam Hospitals
Ruth and Paul Levinger Professor of Medicine, The Warren Alpert Medical School of Brown University, Providence, RI, USA

Buxton氏はACC,AHA,ACPのフェローであり,心臓電気生理学分野の権威。ACC/ESCの心室性不整脈/突然死の患者ケアのガイドライン作成委員会のメンバー の一人で,MUSTT(Multicenter Unsustained Tachycardia Trial)の筆頭著者でもある。