RE-LYの結果はまさにパラダイムシフト |
Halperin氏にESC2009会場でインタビューにこたえてもらった |
■RE-LYの結果をみて
RE-LYの結果は,非常にインパクトの大きいものでした。心房細動(AF)患者を対象に抗凝固薬の有効性を検討した最大規模の臨床試験であるということに加え,臨床医として長きにわたり期待していたことを結果として出してくれたからです。
これからは,抗血栓療法の際に,ワルファリンとダビガトラン(dabigatran etexilate)*のいずれかを選ぶということが可能になるはずです。ワルファリンは約60年にわたって使われてきた薬剤ですが,いろいろな制限があるため,患者が長期にわたり服用を続けるのが難しいのです。一方,ダビガトランを使えば,はるかにシンプルな治療が可能になります。モニタリングは不要ですし,食事や併用薬との相互作用に注意する必要もありません。この15年間,ワルファリンに代わる治療を待ち望んできたわれわれにとって,RE-LYの結果はまさにパラダイムシフトを起こしたといえます。
*dabigatran etexilateはダビガトランのプロドラッグ。服用後,速やかにダビガトランに変換される。本邦未承認。
■臨床へのインパクト
RE-LYではダビガトランが2種類の用量で検討されましたので,実際に投与する際の用量選択の可能性も示されたといえます。つまり,出血リスクを懸念して抗凝固療法を行っていなかった患者に対しては,低用量のダビガトランを投与することが可能です。血栓塞栓症のリスクが高い患者には,ワルファリンよりも有効性に優れる高用量のダビガトランがよいのではないかと思います。
■ダビガトランのデメリット
ダビガトランについて,懸念される点もいくつかあります。
まず一つは,ワルファリンに比べて心筋梗塞がやや増加したことです。AF患者では心筋梗塞はむしろ稀ですが,ダビガトラン群で増加していた理由は不可解です。もう一つは,消化管毒性の問題です。ダビガトラン群では,プラセボ群に比べてディスペプシアや消化管出血が多くみられました。これについては,薬剤に含まれる成分が影響している可能性がありますが,いまはまだデータが不十分です。
キシメラガトランの臨床試験結果から懸念されていた肝毒性は,RE-LYではみとめられませんでしたが,新しい薬剤には,広く治療に用いられるようになってからはじめてわかる副作用もあるので,注意が必要です。ただし,RE-LYでは2年以上にわたって非常に多くの患者にダビガトランが投与されていることから,おそらく肝毒性については心配はないと考えられます。
< 2010.7.01 >
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THERAPEUTIC RESEARCH vol.31 no.6 2010
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