心房細動そのものに対する効果がどうであったかが,もっとも必要な情報 |
Nattel氏に電話インタビューにこたえてもらった |
■ACTIVE Iの結果をみて
研究仮説としては,ARBが血管イベントを抑制し,一次エンドポイントで群間に有意差がみられると考えたのかもしれません。しかし,一次エンドポイントを構成する各イベントは,心房細動(AF)に特有のものではありませんでしたので,一次エンドポイントで群間に有意差がみられなかったというのは予想できた結果です。
イルベサルタンによる降圧効果はあまり大きくありませんでしたが,両群に割り付けられた患者の6割がすでにACE阻害薬を服用していたことを考えると,ARBによるさらなる上乗せ効果を示すのは難しかったと考えられます。さらに,ベースライン時の治療状況を考えると,いかなる治療効果を示すのも難しかったと思われます。
■結果の解釈
そのなかで,イルベサルタンが心不全による入院を減少させましたが,これはおもに降圧効果によるものではないかと思います。一方で,後付け解析から,イルベサルタンによって脳卒中+一過性脳虚血発作+全身性塞栓症が13%有意に抑制されたという結果が示されました。これにはレニン-アンジオテンシン系遮断による心筋リモデリング抑制作用が働いた可能性があります。また,入院日数・回数においてもイルベサルタンで有意な減少がみられました。これについても同様の説明が可能かもしれません。
ただし,ACTIVE Iの結果を臨床に応用するには,まだいくつかの解析の結果を待つ必要がありそうです。AFそのものに対する効果がどうであったのかということが,もっとも必要な情報です。その情報により,降圧効果がアウトカムの差に関与しているのかどうかが明らかになるでしょう。そうした解析結果が発表されるまでは,ACTIVE Iの結果の解釈には注意が必要だと思います。
■実地臨床へのインパクト
ACTIVE Iは,まずイルベサルタンが安全であること,そしてAFに対してベネフィットをもつ可能性があることを示しました。ただし,これまでの診療行動を変えてしまうようなインパクトの大きい結果ではありません。この試験の結果のみで,ACE阻害薬の代わりに,ARBを使うという根拠にはならないと思います。しかしながら,さまざまな仮説を生み出す面白い結果が得られていると思います。イルベサルタンが本当にリモデリングに作用し,洞調律維持作用を示したのかどうかは非常に興味深い点です。今後の解析が楽しみです。
< 2010.7.01 >
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THERAPEUTIC RESEARCH vol.31 no.6 2010
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< 2010.5.31 >
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